心理的安全性は組織を厳しいものにする?
Googleのリサーチチームの研究成果によって、瞬く間に広まった「心理的安全性」。
HR関連の本やイベントでは、昨今盛んに取り上げられるキーワードです。
そもそも「心理的安全性」とは何か?
多様な定義がなされていますが、私は、組織において「率直で積極的な言行に誰もが感謝できる」ことだと思っています。
例えば、会議などの場で、言うべきと思うことが心にあっても、
「バカにされたくないな…」
「嫌われるかも…」
「上司の機嫌を損ねるかもしれない…」
このような思いが先に立ってしまうと、なかなか自分の気持ちに正直になることは難しいものです。
あなたの所属する組織では、上司も部下も素直にものが言えていますか?
ちなみに、Googleは、心理的安全性を下記のように捉えていると発表しています。
”「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、
このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうか”
とても分かりやすいですね。
帝国ホテルの人材育成部では、このような概念が今後の組織開発における重要な観点になることを確信していました。
そこで、心理的安全性が今のように話題になる前から、管理職研修のコンテンツの一部に取り入れていたのです。
心理的に安全なチーム ≠ 仲良しクラブ
管理職の皆さんに伝えるときに注意していたのは、
「心理的安全性が高いチームとは、仲良しクラブではない」
ということ。
仲良しクラブは、当たり障りのない人間関係が優先で、アウトプットの品質はあまり関係のない組織です。
企業におけるチームは、ゴール達成のためにお互いの意見を尊重し合える組織であることが大切です。
帝国ホテルであれば、「お客さまのために」という揺るぎない理念を体現するために、一切の妥協なくベストを尽くすことが大前提でした。
そのうえで、思ったこと・感じたことをお互いに言い合い、取り入れていく柔軟な姿勢を、特に管理職には持ってほしかったのです。
ところで、チーム内の心理的安全が高いと、メンバーは心理的に楽になるでしょうか?
私はそうではないと思います。
チーム全体で、ゴール達成に向けた闊達な議論が交わされ、時には衝突しながら進んでいくのですから、どちらかといえば、一人ひとりへの要求水準の高い、ある意味で厳しい組織になっていくものです。
要求水準が高くなることで、それに応えようと成長する人もいれば、残念ながら離れていく人も出る可能性があります。
むしろ、これは組織にとって健全なことです。
受け取ることの大切さ
一方、そのような変革を起こすために、まず自分自身が変わる覚悟が、経営者にあるのか。
組織の上に立つ者として、メンバーからのどのような意見をも受け取る度量の広さを持つことが求められるのです。
例えば、メンバーの意見や行動に準備不足や誤りがあるとき、あなたならどうしますか?
リーダーが頭ごなしに否定したり、批評したりしてしまうと、チームの心理的安全性は一気に崩壊します。
どのような内容であれ、一旦は受け取ることが、チーム内に心理的安全性を醸成するために必要不可欠です。
ちなみに、「受け取る」と「受け入れる」は、別です。
ここを勘違いしてしまうと、管理者として機能しなくなってしまいますので、ご注意くださいね。
どんな時もメンバーから出てきた意見が、100%ダメということは、まずないはずです。
そう信じているだけで、何かしら気づくことがきっとあります。
もし本当に気づくことすらなかったのだとしたら、意見を言ってくれたことに対して感謝する。
それだけで、チームの心理的安全性は、ぐっと高まります。
お客様の声
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人事部長
石川 孝子 様