できない部下は本当にできないのか?
人材育成の仕事をしていると、管理職の方々からこんな悩みをよく耳にします。
「部下がなかなか成長しない」
「部下にやる気、成長意欲がない」
「部下が思うように育たない」
私もこうした悩みに直面してきた1人です。
一般論としての育成方法は熟知していますが、相手によって適切な指導は異なります。人が入れ替わるたびに、どれだけ試行錯誤を繰り返してきたことか。
ここで、過去特に印象的だった「変わろうとしない部下」のエピソードをお伝えしたいと思います。
人材育成部門に事務作業を担当するパート勤務の女性がいました。
そこそこの年齢で人当たりはよいものの、プライドが高く、頑固で、自分のやり方を変えない。
何事も自分が判断基準になっていて、残念ながら仕事の品質が期待水準には満たない。
特に文章をまとめるのが苦手で、何度も何度も手直しをしていました。
このような部下を持つと本当に困りますよね。
しかし、人の成長を簡単に諦めたくはありません。
とにかく辛抱強く彼女を知ろうと心がけました。
日頃から何やらイラストを描いているので、聴いてみると漫画家になりたかったとか。
そして、どうやらアニメオタクでもあるらしい。
なるほど、彼女が文字情報にあまり興味がない理由がわかった気がしました。
そこで、彼女の強みを活かせるように社内向けのポスター作成の仕事を任せることに。
こちらが決めた趣旨をどう見せるか、腕の見せどころですよと。
すると、なかなか変わろうとしなかった彼女が、にわかに積極的に仕事をするようになったのです。
その後、良いところをどんどん褒めて、改善の指摘は「こう思うんだけれど、どう思う?」と本人の意見も尊重しながら行いました。
やがて、自発的に提案や意見が出るようになり、アウトプットの質が高まっていっただけではなく、他の仕事に対しても意識が高まり、業務全般に亘る品質改善が顕著に見られたのです。
どんなメガネをかけて部下を見ていますか?
経営者や管理職の方々からは、いつやめるかも分からないパートにそこまでリソースを割いているヒマはないとの声が聞こえてきそうですが、私にとっては、人の成長には限界がないと確信を持てた出来事となりました。
上司として、どのような部下であっても真剣に向き合い、強みを見出し、活かしていくことが、結局は自組織の生産性を大きく向上させることつながります。
できないことに目を向けている間は、できることは見つかりません。
できることを見つけようとすれば、できることが見えてきます。